保険医協会の主張

 

参議院選挙が終った                              2010年8月号掲載 

 7月11日に行なわれた参議院選挙で民主党は議席を減らすことになった。政権交代後初の国政選挙であったが、菅首相の「消費税増税」演説で票を減らす原因になったとマスコミは論じている。また、普天間基地移設問題についても国民に失望をもたらした。今後の民主党政権の国会運営は困難が予想される。
少子高齢化社会の波が襲ってきている。過疎地域では働く所もなく、生活できないために住民も離れている。高齢者は行き場を失って生きている。社会保障制度の充実が求められるが今のところ大きな計画もない。財源をどこから求めるかが問題であるが、民主党も自民党も消費税増税に求めているようだ。単純な考えであるが、豊かな生活をしていない国民に負担を求めるのではなく、大企業に求めてはどうだろうか。毎日新聞(7月23日)に掲載された本田宏氏(済生会栗橋病院副院長)の私の社会保障論「医療を日本の一大産業に」を注目したい。避けて通れない超高齢化社会に対応するために社会保障対策が重要になってくる。
先日、厚生労働省は、75歳以上を対象とした「後期高齢者医療制度」に代わる新たな高齢者医療制度の中間とりまとめ案を示した。今の制度は12年度末で廃止し、13年度から新制度が発足の予定である。「後期高齢者医療制度」は、保団連・協会が「即時廃止」を求めてきたものであるが、報道内容では、75歳以上の人は新制度では、会社員とその被扶養者は企業の健康保険組合など被用者保険に加入する、自営業や無職の人は、市町村の国保に入るとのことであるが、制度が変わっても保険料などにはあまり変わらないように思われる。来年の通常国会に提出される予定で、改善点を指摘する活動がより必要になってくる。

 

第29回総会を終えて                          2010年7月号掲載

 さる6月20日、香川県保険医協会第29回総会が開かれました。 第一部に総会、昨年の活動は例年どおりでしたが、休業保障制度は現状で新たな募集が出来ず会員拡大も停滞し、協会活動にも影響を受けました。第二部は、日野秀逸先生を招いて「過渡期の医療政策はー民主党の医療政策はいかなるものか」と題して記念講演がありました。 昨年の総選挙で自民・公明党政権が倒れ国民、保険医協会の期待を担って民主党・社民党・国民新党の連立政権が誕生しました。 しかしながら民主党選挙のマニフェストに後期高齢者医療制度廃止、保険医協会も廃止を主張していたにもかかわらず廃止せず、その上消費税を10%、今の二倍にすることをたくらみ、マニフェストと異なった政策運営で国民の期待を裏切り、落胆と信頼できなく参議院選挙で与党過半数割れになりました。 今でも医療機関は最終消費者として消費税がかかってきているので10%になると医療機関の経営は多くのところで成り立たず倒産が増え国民の健康を守ることが出来なく医療崩壊が一層すすみます。このような状況の中では保険医協会の役割がますます大きくなってきています。 政府に0%消費税の実現、会員のため健全に行なっている休業保障制度を復活させる運動を会員とともに取り組むことが大切です。保険医協会独自の活動として、保険医の経営と権利を守ること、保険医協会しか出来ない医科・歯科合同の研究会、講演会を旺盛に取り組むことです。また国民医療の向上を目指すためにも、高齢者、子どもへの医療費自己負担の軽減、各種ワクチンに対する助成を促進するために取り組む運動をします。 いのちを守る医師として日本国憲法の理念にもとづき生存権や人権、平和を守る運動も保険医協会の活動です。

 

今次歯科診療報酬改定の問題点と歯科医療の今後                                     2010年5月号掲載

 今次歯科診療改定は歯科医療関係者と患者、国民の「保険で良い歯科医療」を求める22万筆を超える請願署名、全国の自治体の4分の1の地方議会意見書採択などの運動を反映して、歯科診療本体は、2.09パーセントの引き上げとなった。

改定内容では、基本診療料に財源の多くが配分され、歯周治療、麻酔、有床義歯などの基本技術料がそれぞれをわずかずつ引き上げられた。また歯科医療関係者の中でも、とりわけ労働環境が厳しい歯科技工士の労働に対してきわめて限定的であるが初めて評価がなされた。しかしその歯科技工士を雇用できる歯科医療機関は全体の1割程度に過ぎず、歯科技工所と連携を行っている医療機関に対する評価へ拡大するべきである。初診料、再診料が引き上げられたが、この財源確保のため、患者の口腔内、咬合状態の記録、診断に必要なスタディモデルが包括化され、歯科疾患管理料が引き下げられた。見かけ上の点数ひき上げのため治療行為にかかわる技術と労働の評価をなくす包括は容認できない。歯科訪問診療の評価体系が見直された。訪問診療では治療時間以外に多大なマンパワーが必要であり、今後在宅医療に積極的に取り組めるよう抜本的見直しが必要である。また、レセプトの電子請求を行う医療機関に明細書の発行が義務化されたが、現行の複雑で難解な歯科診療報酬体系では患者が医療機関にいわれのない誤解、混乱を招きかねない。これは、患者と医療担当者の信頼関係のもとで成り立つ医療そのものを損なう危険性がある。すべて義務化ではなく、希望する方に即時発行できる状態にもどすべきだ。

 継続して患者、国民によい歯科医療を提供するには、低報酬診療の下での歯科医療関係者の熱意、思いやりだけでは到底無理な事である。歯科診療に誇りを持ち、後進の者が希望を持てる状況にするために国民とともに歯科医療環境の改善をすすめる必要がある。

 

診療報酬改定の問題点が明らかに                    2010年4月号掲載

 診療報酬改定が行われました。
 保団連は、「医療崩壊を食い止めるために10%以上の引き上げ」を主張しました。しかし、厚労省の唱える0.19%アップに、後発品のある先発品の追加引き下げ600億円が入っておらず、実際の改定率は、わずか0.03%(100億円)の増にとどまりました。
 まず、診療所の再診料が2点引き下げられ、病院・診療所とも69点に統一されました。2009年6月の中医協医療経済実態調査では、医科診療所は28%が赤字で、再診料引下げに根拠はありません。また、頻用検査や基本的な処置、診療所に多いアナログ・エックス線撮影料等も引き下げられ、診療所をねらい撃ちにした改定と言えます。
 標榜時間外に患者からの問い合わせに対応する「地域医療貢献加算」が新設されましたが、この制度により、かえって診療所の負担が増えるのではないかと懸念する声もあります。
リハビリテーション分野では、2012年の医療報酬・介護報酬同時改定を見据えた内容が見て取れ、慢性期リハビリを介護保険に移行させる布石の可能性も否定できず、注視しておく必要があります。
有床診療所の一般病床は、8日以上の入院基本料が全て引き上げられ、在宅療養支援診療所の指定を受けている場合の初期加算(7日まで)が新設されました。また、在宅療養支援診療所が急性期病院や在宅からの患者を受け入れた場合に算定する初期加算(14日以内)が新設され、地域の第一線医療の役割を評価したものです。
一般病棟15:1入院基本料が20点引き下げられ、90日を超えて入院する患者の報酬が包括される後期高齢者特定入院基本料が全年齢に拡大されるため、中小病院の経営は困難になります。また、病院の療養病床については、「25:1看護+25:1看護補助」の報酬が大幅に引き下げられるという問題もあります。
この間の保団連や保険医協会の取り組みによって、不十分ながら一定反映されている点は評価しつつも、全体として、医療崩壊に資する内容とはいえない、というのが実感です。再改定を強く求めるものです。

 

2010年診療報酬改定 
診療所再診料引き下げに強く抗議                      2010年3月号掲載

 

 中央社会保険医療協議会(中医協)は、長妻厚生労働大臣から諮問のあった「平成二十二年度診療報酬改定」について答申しました。民主党の鳩山首相は、「コンクリートから人へ」と社会保障の充実を掲げて政権交代を果たしました。
 病院勤務医の過重労働の対策を中心に今回の診療報酬改定でありましたが、診療所の再診料69点の引き下げなど医療現場を無視する内容で、このままでは医療崩壊が加速することが予想されます。 これまで保団連・協会は、「診療所の再診料引き下げ反対」、「外来管理加算五分間ルールなどの無条件撤廃」、「歯科の基礎的技術料の評価と引き上げ」などを求めて中医協委員、国会議員など関係者に強く要請してきました。
 保団連・住江憲勇会長談話では、中医協医療実態調査によると、収支差額赤字の医科診療所は、07年の16.99%から09年には28.65%と急増していることを指摘。再診料の引き下げは、診療所の地域医療を担う力を更に低下させるとして、強く抗議しています。また、今回の再診料引き下げが、財源不足を理由にしていることについて、この間診療報酬本体の引き上げ財源から外されていることが明らかになった「後発品のある先発品の追加引き下げ」で捻出される600億円分は、当然改定財源とすべきもの。これを財源とすれば、病院、診療所とも71点で統一が可能であると説明しています。
 今回の診療報酬改定で保団連・協会の要求が不十分ではあるが反映されたことがあります。前回の改定で大きな批判があった「後期高齢者診療料」と「後期高齢者終末期相談支援料」の廃止、「乳幼児加算」の引き上げ、在宅では往診料の引き上げなどがあります。非常に微々たるものですが医療費総枠引き上げが行われたことは、医療担当者、患者、国民の願いが反映したものと思いますが、改定率(0.03%)では、医療崩壊は一層深刻化するであろう。少なくとも総枠で3%以上の診療報酬の引き上げを強く要望します。同時に、患者・国民が必要な医療を受けられるように患者負担の大幅軽減を求めて保団連・協会は国民と共に改善運動を進める覚悟です。

 

「レセプト・オンライン請求義務化」を撤回     2010年1月号掲載

 保団連・協会運動実る
 昨年十一月二十五日、厚労省は「レセプト・オンライン請求に関する省令改正及び告示について」が出されました。これにより保険請求は原則として電子媒体による方式とオンラインによる方式の選択制になりました。
 平成十八年四月に定められた「レセプト・オンライン義務化」に対して保団連・協会は一貫してレセプト請求の手上げ方式を主張し、保険医療を守り、保険医療を支える医療機関を守るために「一人の廃業者も出さない」ことを目指して「義務化撤回」を進めました。今回の省令改正は、「オンライン請求義務化撤廃」となり画期的なことになりました。神奈川協会、大阪協会が中心にオンライン請求義務化撤回訴訟の取り組みを始め、全国の協会・医会の運動だけでなく、患者団体の理解と協力の反映です。
 しかし、保団連・協会の求める手上げ方式とは、紙レセプト、電子媒体、オンライン請求のいずれでも医療機関の希望により選択できることです。常勤医が六十五歳以上の医療機関は義務化免除されましたが、請求方法を電子媒体かオンライン請求の二者択一としたことは、全面的に認めることはできません。
 レセプト・オンライン請求可能になっても特定検診データとの突合せ、情報漏えいの危険性、患者のプライバシー権の侵害なども未解決で残されます。画期的な成果を勝ち取った運動に確信を持って、今後の医療機関、政府、厚労省そして国民を交えた議論の中で、保険・医療の発展につながる真のIT化を目指す活動が重要になってきます。

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